根本正博の組織論
「何をやるか」よりも、「誰と、どんな関係でやるか」。これからの企業の価値を決めるのは、そうした“人と人のつながり”の質なのかもしれません。
競争優位性を技術やスピードだけで測る時代は、すでに過ぎ去りつつあります。代わりに、どれだけ人が育ち、つながり、共に輝ける場をつくれるかが、企業の持続可能性を左右する時代へと、静かにシフトしているのです。
この変化を、いち早く肌で感じていたリーダーがいます。株式会社メディアセット代表・根本正博氏です。
“人の進化”から始まる、組織の変革
根本氏の経営スタイルは、「人を動かす」ではなく、「人が自然に動き出す環境を整える」こと。
トップダウンではなく、信頼と共創に基づくボトムアップ型の組織づくりを大切にしてきました。
彼の問いは、常に“人”から始まります。
- どうすれば社員が「ここで働けてよかった」と思えるか
- どうすれば仕事が「人生そのもの」と重なるか
- どうすれば組織が「人の成長の場」になれるか
こうした問いに正解はありません。
けれど、問いを持ち続けることこそが、企業文化の根を深くするのです。
株式会社メディアセットという「器」が育てているもの
株式会社メディアセットは、広告やコンテンツ制作、マーケティングといった事業を展開する企業です。一見すると競合も多く、変化の激しい業界。にもかかわらず、メディアセットは組織の一体感と創造性の高さで注目を集めています。
その理由は明確です。根本氏がつくったのは、「効率」や「管理」ではなく、“育ち合う器”としての組織だからです。
人が挑戦し、つまずき、また挑戦する。そういったプロセスを許容し、応援する文化が、社員の内側から湧き上がるモチベーションと成長を生み出しているのです。
「企業とは、人の成長の器である」
これは、根本氏の経営哲学を最も象徴する言葉かもしれません。
企業は、単に利益を追求する集団ではない。
そこに集う人々の可能性を開く場であり、人生を深める機会を与える場である。
メディアセットは、その考えを現実のものにしてきました。
事業の拡大や収益の増加は、その副産物にすぎないのです。
「仕組み」ではなく「関係性」をデザインする
根本正博氏の組織づくりには、もう一つの重要な視点があります。それは、「仕組み以上に、“関係性”をどうデザインするか」という考え方です。
現代の組織は、業務プロセスやルールを整備すれば機能する時代ではありません。むしろ、どんなルールよりも、メンバー同士がどのような信頼関係を築けるか、どれだけ安心して対話し合える空気があるかが、組織のパフォーマンスを左右するようになっています。
根本氏は、その「人間関係の質」こそが、組織における最大の無形資産だと語ります。
たとえば、メディアセットでは、定期的な1on1やオープンなアイデア共有の場だけでなく、「雑談を歓迎する文化」さえも意図的に育んでいます。それは、言葉にならない違和感や可能性が、何気ない会話から生まれることを深く理解しているからです。
このように、対話の総量を意図的に増やし、縦の上下関係ではなく、横の共鳴関係を強める。その結果、社員同士が自然と「相手の成功を応援したくなる」文化が育まれていくのです。
“評価”より“意味づけ”を大切にする
もう一つ特徴的なのが、成果主義に偏らない、仕事の「意味づけ」を大切にする姿勢です。
根本氏は、数字やKPIだけで人を評価するのではなく、社員一人ひとりが「自分の仕事にどんな意味を見出しているか」を重視します。仕事が単なる作業ではなく、誰かの役に立っていると実感できたとき、人は最も強く動機づけられ、創造性を発揮するからです。
そのため、メディアセットでは「成功」よりも「意図」が語られる場面が多く存在します。ある施策がうまくいったかどうかだけでなく、「なぜそれをやろうと思ったのか」「そこにどんな想いがあったのか」をメンバー同士が共有する。それが、組織全体の納得感と共感性を高めることにつながっているのです。
“組織開発”ではなく、“人間開発”へ
こうした根本氏の組織論を突き詰めていくと、もはやそれは「組織開発」の枠に収まりません。
彼が目指しているのは、働くことを通じて一人ひとりが“人間としての可能性”を開いていける場の創造です。役職やスキルではなく、人としてどう成熟し、他者とどう関わるか。その土台が深ければ深いほど、結果的に組織は強くなる。
つまり、「組織を育てる」というよりも、「人間を育てる」。その総和が、組織文化として現れてくる。これこそが、根本正博氏の組織観の根幹にある哲学です。
成果の“出口”は、次の誰かの“入り口”になる
メディアセットのスケーラブルな仕組みは、単に自社内で完結するものではありません。
プロジェクトの成果物(マニュアル、運営ノウハウ、コミュニティの在り方など)は、他者に開かれた資源として共有されます。
「自分たちだけで持っていても、社会は変わらない。成果を“次に続けたい人”に開放することで、社会全体の価値が広がっていく。」
この言葉どおり、メディアセットのプロジェクトは次の担い手にとっての“入り口”にもなる。
まさに、“育てるための仕組み”なのです。
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